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米Bloombergが20日に伝えたところによると、Apple社内では生成AI検索で急成長中のスタートアップ「Perplexity AI」の買収をめぐる非公式協議が進められているという。協議はまだ初期段階で、正式な提示額が出ているわけではなく、最終的に取引が成立しない可能性も指摘されている。しかし、もし実現すれば2014年のBeats Electronics(約30億ドル)を上回る、Apple史上最大規模のM&Aになる見通しだ。
Perplexityは2022年創業の若い企業で、ChatGPTに似た対話型インターフェースを通じ、最新のウェブ情報をリアルタイムに要約・引用付きで提示する検索サービスを提供している。月間検索数は7億件を超え、コアユーザー数も急速に伸びるなど、生成AI検索分野の筆頭株と目される存在だ。
Appleが同社に関心を示す背景には、三つの狙いがあるとみられる。第一に、生成AI関連の人材と独自技術を一括で確保し、長年停滞感が指摘されるSiriを抜本的に強化したいという思惑だ。第二に、Safariのデフォルト検索をGoogleに依存してきた構造的リスクを減らし、自社主導の検索基盤を持つことで差別化を図る狙いがある。そして第三に、AI競争で出遅れ感が語られるアップルの市場イメージを刷新し、生成AI時代に向けた布石を示したいという株主向けアピールも無視できない。
ただ、Bloombergは、AppleのM&A担当バイスプレジデントであるエイドリアン・ペリカ氏と、サービス部門を率いるエディ・キュー氏が中心となってPerplexity側と複数回面談したと報じている。資金力に勝るAppleが本格的なオファーを出せば買収交渉は一気に現実味を帯びる。提携や部分出資といった柔軟なスキームに落ち着く可能性も残されている。
生成AI検索をめぐる争奪戦は大手テック企業同士の綱引きが激しさを増している。米司法省がGoogleとAppleの検索契約を独禁法違反の疑いで追及するなか、Appleが自前の検索エンジンを強化する動きは、同社の法的リスクを和らげる意味合いもありそうだ。
今後、Appleが正式に買収提案へ踏み切るのか、それとも提携にとどめるのかは未確定だ。ただ、生成AIがモバイル体験を根底から書き換えつつある現在、同社がいかなる形であれPerplexityの技術を取り込めるかどうかは、Siriをはじめとするサービス全体の競争力を左右する鍵になるだろう。